2020年7月27日~31日「富山湾巡り 雨を友として」(筆者:レプトン)

航行艇:レプトン21 2020年7月27日~31日のシングルハンド(単独)による航行ログです。

梅雨前線が居座って熊本県や各地に大雨が降り大きな被害が出ている、加減して降ってほしいが地球温暖化のせいなのか異常な気象災害が増えている。被害に遭われた方々にはほんとうに心よりお見舞い申し上げます。

ご当地も6月から晴れの日はまれで、さらにコロナウイルス病が追い打ちをかけて、ひとりでに海へ出なくなり陸でヨットをさわることが多くなる。
7月20日になってもこの先の予報は雨と曇りばかりが並んでいる。ふうー、それなら雨でも出港しよう、カッパを着れば良いのだから、雨の航海もいい勉強になるだろうから、と雨を友とすることにした。でも風波への注意はより大事になってくるだろう。出港を7月連休後として、かねてからの計画「富山湾巡り」をやってみることにした、概略は以下です。

7月27日(月)
下架後石田フィッシャリーナ出港→21nm 氷見漁港泊
7月28日(火)氷見漁港→七尾湾の小口→七尾港泊地見学→23nm 和倉港泊
7月29日(水)和倉港→北湾を通り大口→宇出津港泊地見学→27nm 九十九湾泊
7月30日(木)九十九湾→28nm 石田フィッシャリーナ帰着
7月31日~8月1日<予備日>

2020年7月27日(月)

石田フィッシャリーナ出港9:50→氷見港着岸15:20
海岸線で石田へ向う途中、魚津本港の第八珠の浦丸の集魚灯が光っているっている。思わずハンドルを切って見に寄る。何と緑色に光るLEDが混じっている、船腹中ほどからはひときわ大きな箱で囲まれた照明灯が長く伸ばされたポールの先に付いてた、重そうだ。

▲ サンマ船第八珠の浦丸、出力を下げているのか、やんわりLEDが燈いている。今日もこんな梅雨空。

9:50 石田フィッシャリーナ出港、北東2m 波0.2m
完全な曇り空で重苦しい。毛勝山頂上は雲に隠れているがその下は見えている。
山の夏の色は落ち着けて好きな色だ。

10:30 風が弱い、スタボのクォータリーでジブがかろうじて膨らむ。
小雨が降ってきた、四日間これを友として過ごす覚悟なので、よしよし、と思ってやる。山はもう見えなくなった。

▲ ウィスカーポール&機走。雨はポリカ板のアーチ屋根の下に入り座ってしのげて助かる。

11:50 波0.3m 風が北3mに変わりアビームなる。機帆走で4kt、雨は上がった。
風が流れて何でも 乾きだす。振り返れば石田はもはや小さい、左舷横には岩瀬の火力発電の煙突がはっきりと見えてきた。向かう先の二上山が大きさを増し1時方向の石動山の山並みの高さが伸びてきた。満天の雲と水平線に立つ夏山のグレーがかった青色を風に吹かれて見ているが気持ちの良いものだ。

12:20 船ナビを見たら5.5ktだ、風速が上がっていた、エンジンを止め帆走に入る、風と波の音だけがして静かに落ちつく。4ktの心地よい早さです。

▲ 母港石田は遠く離れた、満天の雲り空でアビームの納得した帆走、波が静かでありがたい。

▲ 二上山(ふたかみやま)が次第に静かに近づいてくる。(ブームの211数字の下の小山)

14:20 氷見の定置網の間を抜けるルートに入っている、船ナビの網図と現場を照らす、定置網は図の場所に有ります、大したものです。少しして風が弱まりエンジンを回す、唐島と氷見赤灯台がしだいに近づく。

▲ 14:50 唐島(黒い半円)と斜張橋の塔(中央の飛出た細棒)が見えている

15:20 氷見漁港に着岸、時間が遅いのと雨降りとコロナウイルスで人けがない、観光船も欠航の看板が上がっている。霧雨の間に手早く係留してから氷見総湯へ行ってさっぱりする、ドライヤーが有ったので濡れたシャツも強制乾燥できて良かった。雨が強いので買出しは止め、持参のパックごはん、おすまし、野菜サラダ、玉子焼き、チーズ、イワシ缶詰、ビールの夕食を食べる。お茶を入れて明日の海象を調べる、SCW予報では低気圧が能登沖を進み明日昼頃には南西20mが吹く。これに乗り出す元気は無い、明後日には風は収まるので明日は日和待ちにする。

▲ 後の建物は製氷建屋です、公園の芝がふさふさして元気な色をしている、雨のせいかな?

▲ 観光船と斜張橋、雨降りとコロナ病で人はいません、氷見港は着岸連絡を組合にせず止めるのが良い

▲ 明日7/28は15~20mの南西風で波も高そうです、出港を日延べします。(これは7/28朝のショット)

2020年7月28日(火)

荒天をやり過ごす日〝ひねもす のたりのたり かな〟 

06:00
 起きる、すぐにSWC風予報を見る、強風海象は昨日の具合と変わりはなく日和待ちでよかったです、
奇妙な安堵感が湧く。
朝食後近隣のライブカメラを見る、石田は波10cm、他の場所も静かな海で拍子抜けです、吹くのはこの後からなんだろう。

17:00
 南西風10m以上が吹いている、雨もしとしと降る、体が冷えたのだろうか暖かいものが欲しくなり
夕食はチャンポン麺を作る、キャベツを多めにしてトマトも引張りだす。雨風が強く、出るのがいやで洗面所で体を拭く、サッパリした。

ハッチの上にポリカ板で屋根を付けてある、重ねを引き出すと雨しのぎ力が大きくなる、雨の日は助かる。

2020年7月29日(水)

氷見漁港5:30→七尾湾小口→七尾港泊地偵察→和倉港14:50 泊

4:30 起床、5:30出港。 雲は低く全天雲で埋まっている、風弱く観光船の旗は垂れて港内に小波はない。 定置網の船が帰ってくる、港口のすぐ外ですれ違う、電気がにぎやかに燈いてエンジン音も引き波もでかい。 定置網に沿って沖へ出る、針路は90°。 6:00網を越えた、左へ舵を切りコンパス25°で能登半島の海岸を左舷で見ながら七尾湾小口を目指す。西3m 機帆走3.3kt 霧雨。

7:20 虻ガ島が左舷横になる、南西2m 海面まで雲が降りて幻想幽玄な能登半島の海にいる。

7:50 大泊鼻沖を越えて先が開けて七尾湾口あたりがが見えるようになる。ここで針路10˚に転舵してさらに北上を続け小口を目指す。

10:20
 雨がやんで風も止まって4スト船外機が軽やかな音を立て、ゆるい風が首筋を撫でて行く。左舷の海岸はいつも石田から見ている対岸の能登半島なのだ、それは海の向こうに黒い影が横たわるだけで街々の位置はいい加減に想像していた、その場所を今家々が見える近さで見られて引っ掛かていた問題が解けていくような感覚になる。

▲ 氷見を出て1時間、氷見の大きな海鮮ホテルが左端に小さくなって見えている。

▲ 氷見を出て2時間弱、虻ガ島(中央少し右)が見えてきた。この奥が女良漁港です。

▲ 大泊鼻の定置網は1.6nm沖まで伸びている、冬の寒ブリ網もここまで出しているのかな?

11:30 七尾湾小口の航路口にやってきた、左げん浮標と右げん浮標の右寄りを目ざして進入する。前方に小泉崎の指向灯灯台が見え遥か奥に能登島大橋が見える。本船がいなくて気楽に進める。風が真正面から吹いてメインセールがシバーするので少し間切って風を当てる。

12:50 寄り道して七尾港の泊地を見ていく、向かう途中に島が有るのを海図を見て知っていたがどんな風景なのか前から気になっていた、その島の北側を通る。日差しが出てきた。

13:10 七尾港防波堤を抜け港内へ入る、食祭市場の船着場とヨットのいる奥の岸壁を眺める、水深は十分あった。食祭市場の岸壁は波が入ってくると思うので静かな時専用かな。

14:50 和倉港に着岸、連休明けで期待通り岸壁は空いていた。日も照って熱くなってきた、やっぱり晴れは良いもんですね、青色が増えた空に大きな加賀屋ホテルがデデンと鎮座している。係留の後和倉温泉総湯へ入り帰りにスーパーで食料を買う、かつ丼と天ぷら丼、ニシンの昆布巻き、白菜の漬物、ピリ辛のくらげ、冷えたビール、鮮魚部の刺身が売り切れで残念。
18時から夕食、岸壁のビットとバケツの上に板を置いテーブルにする、積んである折りたたみいすに座り風に吹かれて晩餐を始めた、ビールが浸みた、かつ丼もうまかった、夕日のShowも見せてもらった。

▲ 小口の航路口、左のLPガスタンクの右に左げん浮標シュラウドの右に右げん浮標が小さく見えています。

▲ 赤色の灯台が雌島に有る、左の煙突は七尾火力発電所です、ブームの下の煙はベニヤ板工場です。

▲ 雄島です、とても小さいです。雌島~雄島の水深は8m~5mと魚探に表示されました。

▲ 七尾港の食祭市場の船着場、黒い防舷材を付けてあった。

▲ 七尾港の奥の岸壁、右の草地は食祭市場につながっている。

▲ 和倉港の着岸はこんな風景です。テーブルの板を乗せたビットは見えている黄色いやつです。

▲ 水線上に通ってきた能登島大橋が見えている、右のビル群も名立たる和倉温泉です。

▲ 18:54 夕焼けShow,光と色がまぶしく奇麗だった。

2020年7月30日(木)

和倉港5:40→ツインブリッジ→北湾大口→宇出津(うしつ)港泊地偵察→九十九湾15:10泊

5:40 和倉港出港、昨夜調べた風予報は弱い風が定まらず吹いていた、今は北西3m 波0.1m
雲の隙間からうす青い色が見える、雨が落ちる気配は少ない、濡れないのはありがたい。機帆走3.3ktでツインブリッジに向かう、橋の手前に恐ろしい岩礁帯が有るので左側の岸に寄って橋を抜ける。でも、左の岸にはカキ養殖網が有って、こちらの見張りも大事です、なかなかスリリングな水路なんです。

7:50 二時方向に能登水族館、その沖に小島が四つきれいに並んでいる、そのまた左は大口の海が開いてる。風見は北東、3m、クローズホールド、海は雲を映してゆるやかに光っている。ツインブリッジから青島の北300mを通り北上してからここまでが、ルートファインがせわしく要るのでようやくここで朝食を食べる。昨夜食べきれなかった分がぴったり間に合った、泡の出るむぎ茶も有る。

9:40 大口外の網抜け安全点(N37°11´ 36" E137°5´18" )に着いた、ここで左へ転舵33°に針路を取り宇出津港沖へ向かう。大口の外には沢山の漁網が入っている、これに乗り上げないためには上記の点と大口の中間点を結んだ線上を進めば大丈夫です。今回これで成功してます。ルートのより所は海保の沿岸域情報提供システムです。

▲ 一泊した和倉港を振り返る、和倉温泉の大きな旅館群と左に能登島大橋が見えている。

▲ 左の岸寄りにツインブリッジへ近づく、右端に孤立障害灯標が写っている、左へ岩礁が並んでいる。

▲ ツインブリッジが迫る、釣り船があれこれと動くので気を抜けない。

▲ 正面は七尾湾の大口、右端に能登島水族館が有り沖に島が並ぶ。今日も海と空がつながっている。

10:40  間近に能登半島を眺めながらやってきた、こちらの海面にも定置網が沢山入っていて海保の網図を照らしてきたおかげで総て網の外のいい所を通ってこれた。宇出津漁港へ入れる定置網の隙間まで1.5nmだ、ブームの下に目ざす宇出津の街が見えてきた、右舷前方の白いのは真脇か小木か?。この後黒雲が 左舷(能登半島)からやってきてどしゃ降りの雨となる。

11:10 網の沖端から網の間を通り宇出津港へ向かう、この時右舷を海保の高速船が追い越して港へ入って行った。港に入るとすぐ左手に先ほどの高速船が赤色灯を回して接岸している、どうやら燃料給油の気配、臨検はなさそうです。宇出津港は街中で便利そうです、ライブカメラで見て、泊地候補が有ったのでそれを見てきます。

12:00 宇出津港を出る、九十九湾まで岸通しに行けば近道なので気を張って進んでゆく、が何と。真脇まで来たところで先の定置網の浮きが陸までつながっているように見えるではないか、定置網違反?。あれこれ言ってる暇はない、すぐに沖出しを始める、この定置網のでかい事、はるか沖に小さな旗と浮きが見える。こんな事なら宇出津の定置網からまた出ればよかった。網の外を回ったのが13:00でした。

▲ 正面が宇出津港、港の右手と左手に定置網が有って、港の出入りはその間を通る。

▲ 宇出津港の着岸偵察、ガソリンスタンドの前のこげ茶色の物置の前がいつも空いている、水深4m。

14:20 九十九湾の新たな係留地へ着けた。ここはGマップを見て探した場所で一度着けてみたかった場所です、ここなら歩いて買出しも出来そうなのです。どっこい岸壁が高くてスタンッションの上に乗らないと道路へ上がれませ。交通事故にも注意です。そうそう、ラジオは「九州の北部と四国が梅雨明けしたとみられる」とさかんに報じています。

▲ 新たな泊地候補、岸壁の下半分が凹で船への当たり具合がいまひとつです。でも深さは4mで安心です。

▲ 奥まった入り江、周りに山が有って防風力も有りそうだ。

15:10 九十九湾に着岸、ここは別天地(海)です。

静かです、心が安らぎます。やり着けする時、浮き球引き上げにてこずり失敗、二度目で何とかなりました。

青空が広がり先ほどのどしゃ降り雨がうそのようです。

風呂に入りたいのですがあの「ホテルのときんぷら」は日帰り入浴を中止したので入れず、しかたなく体を拭くことにする、風に吹かれながら体を拭くのも気持ち良いもんです。

▲ 青空が広がった、気持ちが軽くなる。

▲ 静かでいいんですがバラストキールに厳重注意です、岸に岩が有り急に浅くなる。

2020年7月31日(金)

九十九湾8:50→富山湾南下→石田フィッシャリーナ帰着15:00

4:00 起床、船に雨の当たる音、ハッチを開けると風が顔に当たる。寝る時は静かな九十九湾だったのに、荒れた外の海を思う。充電の終ったスマホでSCW予報を見る、5:00~8:00は悪い、輪島で15m、湾内でも10mの表示、以後は弱まるようで9時出港に遅らせる。その頃は雨も止み薄曇りの予報になっている。

06:10 雨が激しい、稲妻と雷鳴が空を駆ける、向かいの山の木々もユッサユッサと揺れ、海面もすりガラスのようで風が手で波を作ったように走って行く。9時に出港出来るんだろうか心配になる。しばらくしてラジオが「能都町に大雨警報が発表されました」と報じていた。

8:50 出港、晴れてきた、波のない湾内でメインセールを上げ湾口を目指すとすぐに左へ大きくヒールした。外の海ではさぞかしと思い広い所まで戻り2ポイントリーフにする。はたして外の海は、白波がやたら多くGPVの沿岸波浪予報と違います。まあー、南西8m~10mだから波もこんなもんで自分の思いに合っていて納得。そうだろうー、という感じなので行くことにする。波もまれに慣れて少し落ち着いたところでジブをチョット出す。出発が遅いので今の速度ではらちがあかない、船ナビ速度は3.5~4.5ktに上がった。風が強いので風を少し流しヒールを減らしクローズリーチで進めるのはとてもありがたい。それにしても波当たりで減速、大波でピッチング、しぶきも何でもみんな派手に出る。

10:30 白波が少なくなる、風も少し落ちたようで風音でラジオが聞こえなかったが何を言っているのか解る。ジブをあと少し出す。

12:00 ちょうど中間点、西8m 波1m 晴れ 雲は水平線の上にだけ積雲が有る、前方に北アルプスがわずかに解るようになってきた。

12:40 自分の街が見えてきた、船ナビで測ると10.3nm 霞の中のものが、どれもこれもみんな解る。西7m
アビームで6Kt近く出ている、波は右舷真横から来て波の表情が見れる、帰りつくまで後二時間ほどか、二時方向に二上山が有って後ろに九十九湾あたりが見えている、7月27日に出港した富山湾めぐりを思い返してそれと重ねる。右手を手術してから2年間ブランクが有ったがなんとか戻れて、やれるようになって良かった。 船ナビと海保の網図とSCW予報のおかげでトラブルなく帰れそうです。

ここまでお助け頂いた皆々様に心から感謝申し上げます。乾いた風 太陽を受けて 今快走している。

▲ 九十九湾を出て石田に向かう。風が良く吹いて帆走だけで帰ったと言って良い。AV4.6kt

▲ 13:30 石田へ帰っています、入善の風力発電 宮野山の仏舎利塔 YKK越湖工場が見える、快走。