2021年7月「能登半島の嫁礁と七ツ島を巡ったログ」(筆者:レプトン)

航行艇:レプトン21 2021年7月13日~16日のシングルハンド(単独)による航行ログです。

能登半島沖の嫁礁(よめぐり)と七ツ島を見てきた。七ツ島は輪島から見える小島群で、なじみが有る、だが嫁礁はほとんど知られていない。自分も知ったのは2014頃、石川県のヨット先達のK氏からで、聞いた時は危なさと妖気を感じた。その後も嫁礁は見て確かめたい一つでいつも頭に残っていた。又、七ツ島も微妙な距離感で、薄青色に見える神秘的な小島群で、何とか間近で見たいと思っていた。

かねてからこの二つを一度に周りはっきりさせたい思いは有ったが数年前に手を怪我して手を存分に使えず、先延ばししていた。今季は手の痛みも減り耐えれそうなので、実行するべく穏やかな海をうかがっていた。

<航海航程>
7/13(火)石田フィッシャリーナ→41nm狼煙漁港泊
7/14(水)狼煙漁港→12nm嫁礁→15nm七ツ島→13nm輪島港泊 計40nm
7/15(木)輪島港→25nm禄剛崎→12nm飯田港泊 計37nm
7/16(金)飯田港→10nm九十九湾→29nm石田フィッシャリーナ 計39nm

<嫁礁、七ツ島ルート図>

2021年7月13日(火)

5:50石田フィッシャリーナ出港→15:30狼煙漁港着岸
5:50 明るくなった石田フィッシャリーナを出港、港口の近くで一本釣操業中の角マ丸さんへ寄り挨拶短音一つ、漁はイカが順調とか、レプトンは能登方面へ行くことを伝えコンパスコース360度に向ける。
北西3m 波0.1m機帆走5kt、生地鼻灯台とYKK越湖工場が右舷を過ぎて行く

▲ ドジャー右に生地鼻灯台

10:30 能登宇出津の室内テニス場の白い屋根が霞の中でも目に付く、飯田湾あたりから右に双眼鏡を流すと陸が低くなって行き船の先方で水平線に張り付いて無くなる、そこが長手崎。

青空が広がり日差しが熱い、傘をさす。

風がポートから正面へ移りシバーが気になる。機帆走5kt弱

▲ 能登半島に積乱雲が立つ、下方は暗く雲が厚い、風の急変を警戒する

13:20 長手崎灯台がすぐそこだ、目を前方に凝らし先の岩礁の姫島灯台を探すがが見えない、ならばと双眼鏡でなぞると有りました、見つけて安堵。肉眼でも見えてました。(思いより小さかった)
北4m 波0.2m 風見は正面、ジブをしまいメインセールのみ、それもファッションで上げている。
4.8kt維持

▲ ドジャーの左にポツンと白いもの、長手崎灯台です。

14:40 狼煙漁港沖へ来た、途中の姫島灯台水路は難儀した。
風が強まり海面にぎやか、何といっても狭い水路に浮き球と旗の多いこと、なりふり構わず舵を振る、WC大回転、回転?みたいに振り進む。
陸に寄った時、船ナビは水深3.5mを示した。何度か通るがこんなに沢山の刺し網は初めてだ。
漁師さんの大事な良い漁場なのか。

▲ 禄剛崎をめざす、姫島灯台水路の写真が無い、舵切と見張りに忙しかった

15:30 狼煙漁港に着岸、入港前に明日の嫁礁行の弾み付けに沖をセーリングする。北8m 波0.6m
禄剛崎灯台など見る余裕はない、帆走に全力で向かう、気合モードがONになる、今まで楽していたのでこれがヨットだ、を確認させてくれシャキッとした。

▲ 禄剛崎灯台へ向かう道から狼煙漁港が見えた、レプトンは製氷棟の左に小さい

2021年7月14日(水)

3:50狼煙漁港出港 →12:30輪島港着岸
3時に起き空を見る、星が見える、下方は雲、黒々としている。海は静か、行けそうだ。

3:50 出港、防波堤で夜釣りの電気ウキの赤色が飛んで、浮かんで奇麗だ。港口を出ても波は無い、SCW予報通りだ。このまま静かな事を願う。先に出た漁船はどこかもういない。

▲ 嫁礁に向かう、振りむくと禄剛崎灯台が点いていた、静かな海、日本海だ。

4:40 能登沖3nm 北西から風が来た、メインを上げる、海面がしだいにゆらつき、さざ波が全面になる。ジブも広げる。

▲ Rising Sun  4:49

5:30 嫁礁灯台らしきが見えた。少し前から正面に船が見え、その左にも大きな船、もっと左には七ツ島らしき影が有った。あの船の右に三角に立つものが、嫁礁灯台だろう。胸がドキッとして、心がざわめく、少ししてチョットうれしくなる。ぴったり6:00に嫁礁に到着した、海面から黒い太い柱が3本突き出て、何だこれは、別世界に来たような感覚になる。よく見れば柱の南の海面が小さく割れる、ああっ岩が有る。これは大変な灯台だ、これがないとさぞかし沈没船が出ることだろうに。

▲ やってきました、これが嫁礁か! 台座の手すりに黒い海鳥が何羽も休んでいた。

嫁礁を回りこみ次の七ツ島に向ける、向けた先にこちらを向いた巡視船がいる、0.4nm西だ。
七ツ島に向かうと真正面からの風になりジブを巻く、メインはファッション。エンジンさま様で5kt弱で進む。6時半になりラジオ体操が流れる、緊張がゆるみ体内時計がリセットされた感じになる。
振り向くとさっきの海保が回頭してレプトンに伴走している、距離も0.3nm程に近づいた、領海際なの様子を見ているのかなーと思いつつ朝食にした。あれやこれやの思案中、ふと思いついた、ああーっ機帆走してるヨットが形象物を上げているかを見ているのだ、えらいこっちゃ、すぐに棚から逆三角形の形象物を出してバックステーにぶら下げた。と、どうだろう、なんと海保船は回頭して嫁礁へ戻って行った。
危なかった、こんなところでつかまって、大きな罰金を払うところだった、よくぞ思い出したもんだ。

6:50 七ツ島の一番大きな島、大島らしき影がガスの中に見えてきた。

9:00 大島に突き当たって北に振って、隣の狩又島との間を通り大島の船着場を見に行く。
辺りには十隻程の漁船がいる、大島の狭い入り江に突っ込み、きわどい漁をしている船もいる、大島の南側の入り江の奥に有る桟橋が小さく見える、ゆっくり近づいて行く、海底まで見え、水深計は7m、底が白い帯のようになっている、だんだん恐ろしくなり舵を切り離れる。次に荒三子島と烏帽子島の間を目指す、右手の御厨島(みくり)辺りは海面に出た岩が多い、釣り船も数隻いる。荒三子島も近づくとなかなか大きい、今日は静かな海だが荒れるとさぞかしすごい様相だろう、風景を想像してみる。

▲ 七ツ島で一番大きな島が大島、右が狩又島と竜島(重なっている)

▲ 大島の桟橋、奥まった右に有る、海底が見える、小屋も有った、右の山に灯台。

▲ 荒三子島の西面、大きな魚がいそうな雰囲気が充満している。

▲ 輪島に向かう、振り返ると七ツ島、どーもどーも。

9:45 七ツ島見学終了、青空になり日差しが熱い、風は無い。風見は正面を差し波は0.1m、最高の見学海象だった、だがラジオは盛んに「全国的に不安定な気象」に注意を喚起している。

11:40 南東5m ポートのクローズ、ヒールして走る、エンジンを止め4.3kt、この調子で入港まで帆走したい、波と風音と疾走感が気持ちいい、今回の核心部が無事に終わりそうだ、こぶしに力を入れる。

12:30 輪島港着岸、港口を過ぎ中が見えると、おーー漁船が多い、3隻横抱きが目に付く、第一候補の岸壁を見に進む、横抱き船の後は岸壁も高くてダメ、第二候補に泊める。風呂の準備をして、自転車を組み立てる。自転車は初乗りです、14時からの常盤湯へペダルを踏む、奥の漁港も船が詰まっている、地元民気分で街をふらふら見ながら常盤湯へ、良い風呂(480円)でさっぱりして戻る。今日の始末と明日の準備であれこれしてたらモーターボートが真っすぐこちらへ来て横付け、釣った魚を下す。釣れてるものがすごい、大きなマグロとそこそのブリだった。

▲ 輪島入港、港口の幅が広い、中で一気に絞ってある。

▲ 草が茂る止めて良い岸壁、出入の船が多く引き波で揺れた。

▲ 少し離れた海公園鴨ヶ浦、ここのトイレが立派で清潔、維持も良かった。

2021年7月15日(木)

4:05輪島港出港→12:10飯田港着岸
4:05 輪島港出港、薄暗い世界に航海灯が奇麗だ、漁船のじゃまにならぬよう間を探す。港の東にヨットハーバーが有るので覗いてくる。比べると、今日止めていた方が安全度が高い。
コンパス70度、風弱く風見は正面、波0.1m、定置網と陸の間を通り能登見物をしていく。

4:50 山の稜線に建つレーダードームが正横になる、これが日本の空を見張っている大事な役目をしてるのか、そんな思いを持って眺める。

▲ 稜線にレーダードームが二か所有ります。

5:20 千枚田の沖を通る、千枚田を海から見ると全く違う風景です。海面から見上げたら見えるのは田んぼのあぜが見え、田んぼの面は見れない、あぜが横縞に重なって見える。なるほどなるほど。

▲ 千枚田、中央の左横、色が黄緑になっているのが海から見た千枚田

6:15 北東5m 波0.4m 定置網の浮きが岸近くまで伸びている、沖だしして迂回、海上保安庁の定置網図に書いて無い定置網だった、見張りは大事だな。

9:00 禄剛崎を回る、東3m 波0.2m ポートクローズ 機帆走4kt

9:40 姫島灯台の外を通る、往路時は内側を通り、網の浮きと旗竿が多くて難渋したので復路は外回りです。 結論、ここも内側と大差ありません、内側を通った方が総合的に良いです。姫島灯台を過ぎれば漁具はほとんど無い、長手崎まで広々とした海になる。

▲ 写真中央の白い点が禄剛崎灯台で、左端は金剛崎。

▲ 長手崎に再会、あそこを右に回り込み飯田港へ行く。

10:30 長手崎を回り込み、先に有る定置網の陸側を通過。通った陸寄りに暗礁が有って驚く、海面が白くなっているので分かったが夜は沈没だ。青空が広がり、陸は積乱雲、海は層雲が水平線の上に。ラジオは北陸地方が梅雨明けしたと言っていたが本当だ、梅雨空は去った、夏が来た。
右手に大きなビルが珠洲ビーチホテルだ、Gマップで解る。大きなソーラーパネルが取付けてある。すぐ先に蛸島漁港が見えてきた、こんもり茂った小島が防波堤起点になって西に伸びている。これを過ぎるとその先に今日の泊地飯田港が有る。船ナビで位置を確認する。

▲ 右の小山が蛸島漁港の防波堤の起点です。港口はずーと左に有ります。

12:07 飯田港着岸、船ナビとGマップのおかげで初めての港でもすんなり入港できました。暑い、熱い、汗が噴き出る。もやい終わてすぐ横のショッピングセンターに入る。これが良いんです。冷房が効いて別世界、体の熱気が消えて体が楽になる。昼食は冷やし中華とねぎとろ巻き、冷たいお茶。船とSCを何度も行き来して用事がかなう、夕食もSCで握りずしを涼しく頂く、うーーんここは良い。

▲ SCが横に有る飯田港、港口が見えるので波が少し入ってきそうです。

2021年7月16日(金)

4:00飯田港出港→九十九湾に寄り 12:40石田フィッシャリーナ帰着

4:00 飯田港出港、港口を出ても波は無い、風もない。薄暗い中に生活の明りが飯田湾に沿って平たく点々と並んでいる、あと少しで街が目覚め一日が始まる。
5:20 日が昇り背中に朝日が当たる、左舷水平線に北アルプスが柔らかい薄い紺色でお出まし。

▲ 飯田港を出てすぐ、中央に見附島。

▲ 5:12 左の先が小木漁港の防波堤。

6:00 九十九湾に入る、相変わらずしっとり静かな九十九湾です。30分程微速で眺めてから出る。
南西3m 波0.1m スタボクローズ 機帆走で4.5kt コンパスコース170度 空の半分は高積雲
水平線上は層雲、静かに朝食を始める。各泊地で食べ物を仕入れたので食料があまっている。ドーナッツ、レーズンバターパン、チーズ、トマト、キャベツ、コーンポタージュ、オレンジジュース、ソーセージ、ビール・・・どれも出してゆっくり食べる。

7:40 朝食を片付けていたら雲行きが悪くなってきた、雲が厚くなり低くなり太陽も直視できる、
南南西3m 波0.1m+うねり メインセールがはためく。振り返ると小木の街が九十九湾が小さくなって離れていく、宇出津の白いテニス場の屋根が目立って分かる。
四日間の旅が今日で終る。良い天候に恵まれた、予定通り進めたのは波風が静かだったからだ。海神に感謝です、能登半島と海よ、沢山遊ばせてくれてくれてありがとう、これからもよろしくお願いします。

▲ この空の下を石田へ帰る。 8:53